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トロポニンは酵素じゃないと思うんですけど.../もっと時間を。それから髪の毛を。

・最近TVのCMで「ナンチャラ酵素」というのをよく宣伝されているようで、私の患者さんも飲んでいる人がおられます。わたしは、眉唾でみておりますし、自分の親なら(と言っても両親とも死んでますけど)やめとけというところです。そもそも酵素とは『医学書院医学大辞典第2版』によると↓


酵素 enzyme


生体内のほとんど全ての化学反応に触媒作用をもつ物質の総称で,その本体は蛋白質である。酵素は反応の平衡を変えることなく,活性化エネルギーを低下させて反応速度を増大させる。反応に対する特異性が高いため,通常それぞれの酵素は特定の反応を選択的に触媒する。なお,ある種のRNAが触媒能をもつことが知られており,これらはリボザイムと呼ばれる。


・で、何で本日酵素の話かというと明日、毎週大学院で行っているCA(Critical Appraisal)で↓のような心筋梗塞関係の論文がお題なのでちょっと心筋梗塞を勉強しようと思って、酵素という言葉にひっかかったからです。


Christmas, national holidays, sport events, and time factors as triggers of acute myocardial infarction: SWEDEHEART observational study 1998-2013

BMJ 2018; 363 doi: https://doi.org/10.1136/bmj.k4811 (Published 12 December 2018) Cite this as: BMJ 2018;363:k4811




Abstract

Objectives To study circadian rhythm aspects, national holidays, and major sports events as triggers of myocardial infarction.

Design Retrospective observational study using the nationwide coronary care unit registry, SWEDEHEART.

Setting Sweden.

Participants 283 014 cases of myocardial infarction reported to SWEDEHEART between 1998 and 2013. Symptom onset date was documented for all cases, and time to the nearest minute for 88%.

Interventions Myocardial infarctions with symptom onset on Christmas/New Year, Easter, and Midsummer holiday were identified. Similarly, myocardial infarctions that occurred during a FIFA World Cup, UEFA European Championship, and winter and summer Olympic Games were identified. The two weeks before and after a holiday were set as a control period, and for sports events the control period was set to the same time one year before and after the tournament. Circadian and circaseptan analyses were performed with Sunday and 24:00 as the reference day and hour with which all other days and hours were compared. Incidence rate ratios were calculated using a count regression model.

Main outcome measures Daily count of myocardial infarction.

Results Christmas and Midsummer holidays were associated with a higher risk of myocardial infarction (incidence rate ratio 1.15, 95% confidence interval 1.12 to 1.19, P<0.001, and 1.12, 1.07 to 1.18, P<0.001, respectively). The highest associated risk was observed for Christmas Eve (1.37, 1.29 to 1.46, P<0.001). No increased risk was observed during Easter holiday or sports events. A circaseptan and circadian variation in the risk of myocardial infarction was observed, with higher risk during early mornings and on Mondays. Results were more pronounced in patients aged over 75 and those with diabetes and a history of coronary artery disease.

Conclusions In this nationwide real world study covering 16 years of hospital admissions for myocardial infarction with symptom onset documented to the nearest minute, Christmas, and Midsummer holidays were associated with higher risk of myocardial infarction, particularly in older and sicker patients, suggesting a role of external triggers in vulnerable individuals.

(BMJって、クリスマスの時期にはおもしろい論文のせる「伝統」があるようですね9

・上の論文の内容はおいておいて、心筋梗塞のお話。心筋梗塞を診断するには心電図とか血液検査、とくに逸脱酵素というようなものを測定します。逸脱酵素とは『医学書院医学大辞典第2版』によると↓

逸脱酵素 イツダツコウソ leaking enzyme [同義語]遊出酵素

臓器が損傷を受け細胞膜の崩壊や透過性の変化が生じることにより,本来は臓器特異的に分布し細胞内で機能を果たしている酵素が血中へ遊出(逸脱)したものをいう。血液凝固に関する酵素などの例外を除き,生理的状態では酵素の血中濃度は低い。肝炎でのアミノトランスフェラーゼ(ALT,AST),心筋梗塞でのクレアチンキナーゼ(CK)は代表例である。逸脱酵素の臨床的評価には,それぞれの酵素の臓器特異性,血中での半減期,アイソザイムの概念などが不可欠である。これらを十分に吟味することにより,由来臓器や組織の特定,障害の発症時期,損傷の大きさなどを推定することができる。また,遊出機序も酵素の細胞内局在により多少異なり,臨床的意義も異なる。可溶性分画に存在する酵素は,細胞損傷の大きさに比例して遊出されるのに対し,ミトコンドリア分画に存在する酵素は,細胞損傷が高度の場合や,組織の酸素不足の状態で組織より血中に遊出するといわれている。



・↑にあるように心筋梗塞の場合CK(またはCPK)が上昇するのは医学の常識。なので、心筋梗塞の疑いのひとはCKは必ず採血します。最近(と言っても大分前に)CKと違って新しい血液検査がでてきました。それが、心臓型脂肪酸結合蛋白(H-FABP)やミオグロビン、トロポインというような物質です。これらは、酵素ではなく前者は心臓内で脂肪の運搬にかかわるタンパク、後二者は心筋を構成するタンパク成分です。なので、これらは酵素ではありません。今日インターネットでちょっと心筋梗塞の記事をみているとこれら全部を心筋逸脱酵素とひっくるめて説明しているものがあったので、今回のブログで取り上げてみました。全部ひっくるめていうなら、心筋生化学マーカーとかバイオマーカーといわないといけませんね。

 

私が気になったサイトの記載が↓

心筋に障害を認め心筋逸脱酵素であるトロポニンT、トロポニンIあるいはCPK、CPK-MBの上昇を認める状態である

https://clinicalsup.jp/contentlist/7.html

 

心筋梗塞では心臓の筋肉(心筋)が壊死して行きます。心筋細胞が壊れると心筋逸脱酵素と呼ばれる酵素が血液中に流れ出ます。いくつかの種類の酵素がありますが、最近ではトロポニンという酵素を高感度に測定できる高感度トロポニン検査が心筋梗塞の迅速診断に非常に幅広く使用されています

http://oimachiclinic.com/inspection01/

 

・あんまり、ケチをつけると嫌われますが、初学者が混乱してもいけないので、こういうことも書いていました。

以下日記

・本日1/14(月)は、本来お休みですが、患者さんを診るのと書類を書くのと自分の研究のため病院にいってまいりました。8時半頃病院について患者さん診察。その後ひたすら14時まで事務作業と自分の研究。さすがにその時間になると腹は減るし集中力がなくなるので、切り上げて、14時25分帰宅し、遅い昼食(辛ラーメン)。そして、遅めのお昼寝。1時間弱寝て、上記論文を読むのと心筋梗塞についてちょっとだけ勉強。その後は事務作業。夕食は、鍋。大体道端家は冬は鍋が多い。昔は子供らと食べていたのが、今は配偶者と二人だけでちょっと寂しい。これが、一人ならもっと寂しいだろうな。まあ、ひとりなら鍋しないでしょうが。(←鍋の問題ではない)

・さて、これからちょっとだけ事務作業して、寝ます。明日は、午前外来。午後から大学へ。(と、いつも火曜日は午後から大学というが、なかなか早く病院をでることができません)

 

 

 

 

 


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