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咳で神経根症/外来診療講義レジュメ

過去何回か咳による合併症について書いたとおもいます。今回は、咳によって神経根症を起こしたというレポートのご紹介↓


Cough Radiculopathy: Postinfectious Cough-Related Acute Lumbar Radiculopathy


Samer Alkhuja


Case Reports in Medicine Volume 2020, Article ID 2360854




Abstract
Cough is a protective reflex of airways and lungs. Cough may result in several complications. Postinfectious cough is a cough that begins during an acute respiratory tract infection, usually is self-limited, and is due to airway hyperresponsiveness as a result of airway inflammation. Cough radiculopathy has been once reported by Torrington and Adornato in the form of acute cervical radiculopathy. This is a case of acute lumbar radiculopathy as a result of postinfectious cough. Literature review did not show a similar case.


・本文中に咳の合併症についての表があります。↓に貼り付けておきます。


Respiratory    Subcutaneous emphysema, pneumomediastinum, pneumothorax,

                     exacerbation of asthma, laryngeal trauma


Cardiovascular    Arterial hypotension, dislodgment/malfunctioning of intravascular

                         catheters, bradyarrhythmias, and tachyarrhythmias


Gastrointestinal    Gastroesophageal reflux events, Mallory–Weiss tear, splenic

                          rupture, herniation


Neurological    Headache, dizziness, cough syncope, cerebral air embolism, acute

                     cervical radiculopathy, seizures, and stroke due to vertebral 

                     artery dissection


Genitourinary    Urinary incontinence, inversion of the bladder through the urethra


Musculoskeletal    Rib fractures, diaphragmatic rupture


Others    Fear of serious disease, decreased quality of life, disruption of surgical

              wounds, petechiae, and purpura


・上の表見ていてこわいなーっと思うのは脾臓破裂ですね。他にも椎骨動脈解離や横隔膜破裂なんかも怖いですけど... 咳、あなどるなかれ。(この文を書きながら、何故か井之頭五郎さんを思い浮かべました)



以下日記

・本日8/6(金)は、5時54分起床。本日16時から研修医にする講義のレジュメ作成、資料の確認をしていました。資料の中でSocial Vital Signsを紹介していたのですが、この言葉は日本初で外国の文献にはないと説明するつもりですが、ひょっとした外国にも「普及」しているのではないかと朝ネットでみてみたら↓のようなサイトがありました。(日本人が作ったものですが)


SDH for all clinicians




・さて、これでこの言葉が世界に羽ばたいていくでしょうか?

・レジュメができて出勤。午前外来、午後カンファレンス、回診、講義です。講義にはなんと4名も集まってくれて、テンション上がりました。最後に講義のレジュメを貼り付けておきます。

・講義後も患者さん診たり事務作業して18時32分起床。猫たちに餌をやりにいってから入浴、夕食(スープカレー)。苦しい。ステラ・アルトアを飲みました。そしてMarker's Markの水割りを飲みながらこのブログを書いております。今日はサッサと寝ます。



外来の診療で大切なこと、コツ、私がやっていること ver. 2.0

1.基本的な立場と心得

*大原則:医療は患者さんと医療者の共同の営み(協同作業、Partnership)

          そのためには、目標の一致と情報の共有が必要

             情報とは、患者さんからの情報と医療者からの情報。

               後者は、その情報は患者さんが理解できるものでないといけない。

            患者さんが必要な情報を提供してくれるわけではない

          ・・・話やすい雰囲気と必要な情報はこちらから積極的にとりにいく

          ex. 他院を受診したこと・他院処方の薬 生活上の困難  不安

・患者さんの人権と尊厳の尊重

・社会の中の一人として患者さんをとらえる(生活と労働の場から疾患をとらえる)

   SVS:Social Vital Signにも気をつける

    cf. National vital signs, Community vital signsという言葉もある

        https://sites.google.com/view/svstool

        https://www.min-iren.gr.jp/?p=33925

    上流をみる Think upstream!

・患者さんは、要望と不安をもってくる

  要望がはっきりしないこともある・・・診療の中で明確にする

  「主訴」と真の受診動機は異なることがある

  →最後に二つの「門」をあける:注文と質問・・・ドアノブ・コメントを避ける

  理想は、期待以上の対応(サービスを超える瞬間)ができればよいが...

    外来受診後何か「お土産」をもってかえってもらう

      外来が癒やしの場になれば良いですね・・・我々が癒やしてもらうこともある

・患者さんの受診目的と医師の診療の目的が食い違うことがある→目標の明確化・共有

  また、その目標が経過と共に変わってくることがある

  ex. 最初気管支喘息で受診したが、高血圧の治療をはじめた                        

・情報格差がある(患者さんを馬鹿にしてはいけない)のが当たり前だが...

  本やWebsiteでよく調べられている人もいる

  中には、医師をテストしている人もいる

・録音されているつもりで話す

   私は、実際に病状説明の録音は可と考えます。

   ただし、それをSNSなどで流さないよう約束してもらう。

・こちらは、そういうつもりはなくても、「お医者様」: 話しづらい・訊きづらい

   ユーモアを持って。バリアーをできるだけ低くする。

  cf. 権威勾配

・自分の身(肉体的にも精神的にも)をまもる

  危険を感じたら逃げる、そのために逃げ道を作っておく

  同僚、上司に相談を

・誠実に・・・この対応は果たして誠実か?と自問する

2.診療の最初                                   

・立って挨拶、視線をあわせる(視線は同じ高さで)

   cf. ユマニチュード

・笑顔・・・口角をあげる練習、鏡を見る

・ピー子に挨拶しない。ピー子とばかり話さない。

・最初から患者さんの話を途中で遮らない。

3.外来の二つのモード

・問題解決モード

・ナラティブモード

cf. ナラティブベースドメディシン(「健康を決める力」より)

ナラティブに基づいた医療。英語Narrative-Based Medicineの頭文字をとってNBMともいう。病気になった理由、経緯、病気そのものについて現在どのように考えているかなどの物語から、患者が抱える問題を全人的(身体的、精神・心理的、社会的)に把握し解決方法を模索する臨床手法を指す。患者との対話と信頼関係を重視し、サイエンスとしての医学と人間同士の触れあいのギャップを埋めることが期待されている。

https://www.healthliteracy.jp/yougo/nagyo/narrative_based_medicine.html

 

4.診断

・患者さんの訴えは、その通り書く・・・患者さんの「健康問題物語」(患者側の解釈モデル)を知る

・よく3Ccommon, critical, curable)と言われるが...

 私は、CCOもしくはCCEとしてほしい O: occupational E: Environmental

 最近の流れではEがよいかも。∵SDHSocial Determinants of Health)が重視されてきている。

・最初にcriticalな疾患を考え、除外しておくと後の診療が楽

・鑑別診断は、必ず挙げる。その癖をつける。絶対決め打ちしない。それがたとえ風邪だとしても。

・よく使われるのがVINDICATE!!!P

VVascular:血管系、IInfection:感染症、NNeoplasm:新生物(良性、悪性)、

DDegeneration:変性疾患、IIntoxication:薬物・毒物中毒、CCongenital:先天性、

AAutoimmune:自己免疫/膠原病、TTrauma:外傷、EEndocrineMetabolic:内分泌代謝系、

IIatrogenic:医原性、IInheritance:遺伝性、IIdiopathic:特発性(原因不明)、

PPsychogenic:精神・心因性

・わたしは、MEDIC TO VAN, 最近では V DOT CINEMA SPとしています。

 ∵ VINDICATEでは、Occupational, Environmentalがないので(文献によっては、EにEnvironmentalをいれているのもありました)

 SSystemicで、全身性疾患の部分症ではないかと考える

・鑑別診断のみでなく合併症も考える。

・見通しや今後起こることを患者さんに伝えておく。(特にどれくらい日数で症状が改善するか)

   悪いシナリオと良いシナリオの呈示(シナリオという言い方が患者さんにどう響くか?)

  主な薬の副作用も。あらかじめ言っておく。言うのと言わないのでは雲泥の差。

4.検査

・定期検査はあらかじめ「次、採血しましょうね」とお知らせしておく。

・検査の費用も説明できればベター

・検査するとき、その検査結果で自分の行動が変わるかどうか考える。

・データは必ず確認する。データがでるのが後日の場合、メモや電カルの活用。

・必要なデータは、自分から聞きに行く。

・検体の間違い(そもそも出されていなかった)、人間違い、記載間違い等あることに気を付ける。

・慢性疾患は、あらかじめ計画を立てておく。全身管理を心掛ける。

5.その他

・まず必要そしてずっと必要な能力:コミュニケーション、アサーション

・テクニカルスキルのみでなく、ノン・テクニカルスキルも意識的に身につける

・自分一人で外来をしているわけではない。看護師、事務等スタッフ様達ンb6に感謝。

・古いPから新しいPPaternalismからPartnership

・のど自慢的職業表現はNG

・あらかじめ受診することが分かっている患者(ex. 定期受診、紹介状があらかじめ送付されている)は事前準備をしておく。

【参考文献】

・『研修医になったら必ず読んでください。〜診療の基本と必須手技、臨床的思考法からプレゼン術まで』  岸本 暢将 (), 岡田 正人 (), 徳田 安春 ()。 2014/2/25

・『外来でのコミュニケーション技法 【診療に生かしたい問診・面接のコツ】』飯島克巳。日本医事新報社。2014315日 第2版第3

・『白衣のポケットの中―医師のプロフェッショナリズムを考える』 

宮崎 仁 (), 尾藤 誠司 (), 大生 定義 ()2009/4/1

・『新・医者にかかる10箇条 あなたが“いのちの主人公・からだの責任者”』

ささえあい医療人権センター COML    

・『医師のためのノンテク仕事術』前野哲博。羊土社。2016625日。

・『患者は何でも知っている (EBMライブラリー)

J.A.ミュア・グレイ (), 斉尾 武郎 (翻訳), 丁 元鎮 栗原 千絵子 平田 智子。– 2004/7/23

 



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