胸腔子宮内膜症性気胸/数学おもしろいかも
↑の論文の「考察」の最初↓
胸腔子宮内膜症性気胸は横隔膜や胸膜に生じた子宮内膜により,月経周期に一致して気胸を繰り返す比較的稀な疾患である.30-40歳台に好発し,右側発生が多く,妊娠中や閉経後には発生しないとされ,これまで月経随伴性気胸の名称でも報告されている.一方で,自験例と同様に月経周期との関連が乏しい報告や妊娠中に発生した報告もある.長期経過で胸膜や横隔膜の欠損が恒常的になるためと推察されるが,必ずしも気胸が月経に随伴しないこともあり,月経随伴性気胸(catamenial pneumothorax)から胸腔子宮内膜症性気胸(thoracic endometriotic pneumothorax)への用語統一の提案がされている.
・呼称については↓
胸腔子宮内膜症ガイドラインの実際
栗原 正利,渡邉 健一,坪島 顕司
http://www.endometriosis.gr.jp/kaishi/kaishi40pdf/08.pdf
日本エンドメトリオーシス学会会誌 2019;40:53-57
・月経随伴性気胸というのは、名前からその病態がわかりやすいですね。しかし、子宮内膜症が原因なのに月経と関係が無い場合もあるということでそれも包含した名称でしょうが、ちょっと専門外のものにはわかりにくいかな?なかなか、疾患の名前をつけるのは難しい者ですね。
以下日記
・本日2/28(月)は6時起床。朝勉、朝食、燃えるゴミ出して午前中はZOOMで因果推論学習会。積分の話も出てきたのですが、ちょっと数学もおもしろいかなと思ったりして。(積分でリーマン積分とルベーグ積分があるというのを知りました・・・スティルチェス積分の話から)本立てで眠っている中学数学の本を読み出そうと思います。
・午後から出勤、回診とカンファレンス、夜間診療でした。帰宅は19時42分。ネコたちに餌やってから、入浴、夕食。録画の『月曜から夜ふかし』観ていたら、あっというまに21時でした。その後このブログを書いております。あと、BBCのworld news聴いたら寝ます。
中心静脈穿刺3日後に出血性ショック/久々に2時間草抜き
症例は78歳の女性で,嘔吐を主訴に受診し,進行胃癌と診断し,胃全摘術を施行する方針とした.バイアスピリン,ワルファリン,クロピドグレルを内服しており,休薬の上でヘパリン持続投与を開始した.術前に超音波ガイド法を用いて右鎖骨下静脈を穿刺し中心静脈カテーテル(central venous catheter;以下,CVCと略記)を挿入した.3日後に急激に出血性ショックを来した.造影CTで右胸壁に巨大血腫を認め,圧迫止血を試みたが出血の持続が懸念された.血管造影を行い,胸肩峰動脈の鎖骨枝の損傷による出血性ショックと診断し,CVCを抜去し,経動脈塞栓術を行った.これにより全身状態は安定化し,塞栓術から8日後に胃全摘術を施行した.鎖骨下静脈穿刺によるCVC挿入において動脈損傷は約8%に生じるとされる.血管造影は動脈損傷の確定診断と治療に際して非常に有用である.抗凝固療法など易出血性の素因がある症例においては遅発性に出血が顕在化する場合もあり,特に注意が必要である.
・引用文献の(1)が↓で、freeでみることができます。
Hodzic S, Golic D, Smajic J, Sijercic S, Umihanic S, Umihanic S. Complications related to insertion and use of central venous catheters (CVC). Med Arch. 2014 Oct;68(5):300–303.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4276017/
・私が、以外だなとおもったのは、合併症で一番多いのが不整脈ということでした。ヘーッ、でしたが、常識だったんでしょうか?それはさておき、特に抗凝固剤を飲まれている患者さんは、CVC穿刺後何日間は要注意ですね。
以下日記
・昨日2/26(土)は、7時前に病院かららの電話で起こされました。誰か急変したのかなと朝一でドキッとしましたが、そういうことではなかったので、ちょっと安心。午前中は、↓を日本語訳をしながら読んでおりました。
CAUSAL INFERENCE: What If
https://cdn1.sph.harvard.edu/wp-content/uploads/sites/1268/2021/03/ciwhatif_hernanrobins_30mar21.pdf
・午後は内科学会雑誌の心不全の記事を読み、Amazon Prime Videoで『鬼滅の刃』を観てちょっとお昼寝。その後は事務作業して17時30分より宿直でした。腹痛の救急搬入あり、かなりお腹を痛がられており大変でした。(患者さんが一番大変でしたが)幸い病棟は落ち着いておりました。
・本日2/27(日)は、6時半起床。シャワー浴びて、朝食摂って病棟へ。昨日入院された患者さんはウソのように腹痛が改善しておりよかったです。ただ、患者さんが苦しんでいたとき診断の方に頭がいっていて患者さんに優しい言葉がかけられず、自己嫌悪です。何年、医者やってんねんっ!です。
・日直の先生に申し送りして帰宅。午前中は↑のWhat ifを読んでおりました。午後からは心不全の勉強。15時から17時過ぎまで久々に庭の草抜きをしておりました。現在、腰と腕、肩が痛くなっております。草抜き後ネコたちに餌やりに言って入浴、夕食。そして「ちょんまげビール」を飲みました。で、1本で酔っ払い状態。これから鬼滅の刃を観たらサッサと寝ることにしましょう。
急性虫垂炎に対する保存的治療奏効の予測/2週間ぶりのアルコール摂取
平島 相治 小林 博喜 高木 剛 福本 兼久
日本大腸肛門病会誌 75:108-113,2022
当院で保存的治療を行った急性虫垂炎65例を検討した.65例中55例で保存的治療が有効であったが,10例は保存的治療が無効で即時手術を行った.保存的治療有効群55例中7例において,保存的治療が有効であったものの,入院期間が14日間を超え治療に難渋した.次に即時手術群10例に保存的治療が難渋した7例を加えた17例を,保存的治療が奏効した48例と比較した.年齢,糞石,膿瘍の有無,治療開始後のWBC,CRP値で差を認めた.これら因子を用いて,保存的治療が奏効するか否かの予測式を作成した.この予測式によって,保存的治療が奏効するか否かの感度は95.8%,特異度は88.2%であった.急性虫垂炎に対して保存的治療が奏効するか否か,この予測式が1つの指標になると考える.
・この論文読んで、虫垂炎の治療に関する総論的な議論は、そうなのねと勉強になりましたが、STROBEにそって論文自体を批判的に吟味してみたら、また、統計的な手法を検討していみると、いろいろ問題がありそうですね。(いちいちチェックしておりませんが)二つだけ言うと、①そもそもこの研究のデザインがどういうものかはっきりしないという所。この論文読んでも、後ろ向きにカルテをチェックしたのか、前向きにデータをとったのかがよく分かりません。(STROBEでは、「れわれは研究を単純に「前向き(prospective)」とか「後ろ向き(retrospective)」と呼ぶことを勧めない。なぜなら、これらの用語の定義が明確ではないからである」とありますが...)②予測式の説明変数を選ぶのに「多重ロジスティック回帰分析のステップワイズ法」を使っていること。まあ、ここは議論がわかれるかもしれませんが...
cf. 日本語訳にされたSTROBEのチェックリスト↓
https://www.jspe.jp/publication/img/STROBE%20checklist-J.pdf
観察的疫学研究報告の質改善(STROBE)のための声明:解説と詳細
https://www.equator-network.org/wp-content/uploads/2015/10/STROBE-Exp-JAPANESE.pdf
・この論文の予測式を使った結果が、こうなったという論文が出れば良いのですが。
以下日記
・本日2/25(金)は、6時半起床。一瞬朝勉して出勤。病棟よってから午前外来。昨日に比べて早く終わりました。午後から通常は会議が二つあるのですが、二つとも延期。回診に専念できました。で、帰宅は18時過ぎ。ネコたちに餌やって、ちょっと調べ物して入浴、夕食。久々にアルコールをいただきました。多分アルコールは2/9に飲んで以来です。今日はルプルス・ブランシェ(4.5%)を330mlのみ飲みました。酔っ払ったと言うより腹の調子がおかしい。これはビールのせいなのか、夕食の鍋を食べ過ぎたのか、はたまた相乗効果なのかは不明ですが。で、もう22時過ぎたので英語ニュースを聴いてから寝ます。明日は宿直です。
鋳型気管支炎/外来6時間
Aadil Maqsood, Lukken R. Imel
バゼックス症候群/長期療養中のgood news
Kotaro Ikeda, Keishi Kanno, Yuichiro Otani, Masanori Ito
[英]Bazex-Griffith syndrome
[同義語]バゼックス症候群Ⅱ Bazex syndrome Ⅱ
粉じん曝露を中止してもじん肺は進行することがある/生存しています。
Yasutaka, et al.
Intern Med 61: 395-400, 202
静脈血栓塞栓症に対する直接経口抗凝固薬/何度でも言いますが、やっぱり笑顔が最高
静脈血栓塞栓症に対する抗凝固療法—DOACとくに経口直接Xa阻害薬について
佐戸川 弘之, 横山 斉, 高瀬 信弥, 若松 大樹
静脈学33 巻 (2022) 1 号
日本では2004年に静脈血栓塞栓症(VTE)の診断,治療,予防のガイドラインが発表されたが,その後の改定とともに治療体系が大きく変化してきた.現在の治療では抗凝固療法が基本であり,とくに直接経口抗凝固薬(DOAC),なかでもVTEに適応のある経口直接Xa阻害薬が主流となってきている.直接Xa阻害薬であるエドキサバン,リバーロキサバン,アピキサバンは発現が早い,固定量の投与でよい,モニターが不要,P糖タンパク,代謝酵素CYP450に影響を受ける,などの特徴を有する.3剤で使用法に若干違いがあり,エドキサバンでは減量基準がある.DOAC服用時は凝固因子検査に影響を及ぼす影響があり,日常診療時のモニターにはプロトロンビン時間が有用である.DOACは,がん関連静脈血栓症では消化管や泌尿器系において出血性事象に注意すべきで,抗リン脂質抗体症候群には推奨せず,超肥満例には注意が必要である.DOACの特徴を認識し,症例ごとの損益を評価し治療する必要がある.
・これ読んでみて、あらためて併用薬への注意がかなり必要であると認識しました。また、PT,PTTも調べておけば良いというのも認識しました。
手話通訳者の頸肩腕障害/Judea Pearlの「入門書」が読めた
日本では,2013年に「障害者権利条約」に批准して以降,「障害者差別解消法」が制定され「手話言語条例」を制定する自治体が増加しており,手話通訳が要請される機会が増加している.手話通訳は,上肢系の筋や中枢神経系への強い負担を生じる作業である.過去には,多数の専任手話通訳者が重度の頸肩腕障害を発症し,手話通訳の利用を制限しなければならない状況に陥った歴史がある.この危機に対して,聴覚障害者と手話通訳者は,1994年に手話通訳者の健康と手話通訳制度を両立させるためのガイドラインを作り,以来,その実践に取り組んできた.取り組みの効果は,5 年ごとの悉皆調査で検証されている.2015年の調査では,交代で通訳を担当するルールが90%以上実施されるなど,健康を守るためのルールは一定普及しており,重症頸肩腕障害の多発は防止できていたが,頸肩腕障害が疑われる症状を訴える者が17%いた.専任手話通訳者の女性比率は96%,50歳以上が63%と高年齢化が進み,正規雇用率は18%と低かった.手話通訳者不足の訴えは,2010年時の20%から47%へと増加していた.聴覚障害者の社会進出に見合った手話通訳を保障するためには,手話通訳者の健康を守り処遇を改善する取り組みが今後も必要と考えられる.
【社会医学研究2021;38( 1 ):79-88】
Causal Inference in Statistics: A Primer
- 作者: Pearl, Judea
- 出版社/メーカー: Wiley
- 発売日: 2016/02/26
- メディア: ペーパーバック
肺動静脈瘻で脳梗塞/三角筋だけじゃダメなんです
牧野 晃大, 小林 亮, 北 雄介, 久力 権
日臨外会誌 82( 7 ),1315―1320,2021
症例は58歳,女性.失語症と右上肢麻痺で当院へ救急搬送となり,精査で左中大脳動脈塞栓症と診断され,血栓回収療法を施行された.特記すべき既往歴はなかった.頭部MRIで脳主幹動脈の狭窄はなく,経食道エコー検査で卵円孔開存なども認めなかった.胸部CTで左肺下葉に肺動静脈瘻を指摘され,Rendu-Osler-Weber病を伴わない右左シャントによる,比較的稀な奇異性脳塞栓症と考えられた.治療は経皮的カテーテル塞栓術が第一選択とされることが多いが,本症例は病変が肺末梢に位置しており,流出血管も比較的太く,安全性や根治性の面から,胸腔鏡下肺部分切除術を選択した.全身状態などから手術が許容される場合には,肺末梢の単発の肺動静脈瘻に対しては,胸腔鏡下肺部分切除術は有用な治療法と考えられたため,文献的考察を加えて報告する.
・本文を読むといろいろ情報があってよろしいのですが、標題の「脳梗塞で発症した」というよりは、「脳梗塞を契機に発見された」という方が妥当ではないかと思うのは、私だけ?
目を見て診断できる病気/同僚の心をざわつかせた
Rodrigo Anguita, Ricardo Veas
N Engl J Med 2022; 386:478. February 3, 2022
Kayser-Fleischer ring
ウイルソン病にみられる特有な角膜周囲の銅沈着による症状。青みがかった黒褐色調の輪である。角膜周辺部にみられる(写真)。肉眼的には思春期頃からみられるが,眼科的に細隙灯を用いると思春期前の例でもみることができる。ウイルソン病以外でも,生体内銅過剰沈着するような原発性胆汁性肝硬変やIndian childhood cirrhosis(インド人の子どもにみられる肝硬変症)などでも観察される。(Bernhard Kayser,1869-1954,眼科,独。Bruno Fleischer,1874-1965,眼科,独)