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教訓:胸部単純レントゲンは気管の陰影もちゃんとみようね(ムーニエークーン症候群のはなし)/魚骨に恐怖し、薬局をまちがえた話

・今週のNEJMのIMAGES IN CLINICAL MEDICINEは巨大気管気管支、別名ムーニエ・クーン症候群でした↓

Tracheobronchomegaly

Gabriele Casso, M.D.Patrick Schoettker, M.D.

N Engl J Med 2016; 374:e14March 24, 2016

http://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMicm1508462

・麻酔時の挿管がうまくいかず、あとからレントゲン見直したら気管が太かったというおはなしで、ちょっとお粗末なきもしますが、「後医は名医」ですから、責めてはいけないでしょう。

・Tracheobronchomegalyの訳は、巨大気管気管支。医学書院医学大辞典第2版での説明が↓(巨大気管気管支をひくと、=ムーニエ=クーン症候群となっています) 

ムーニエ=クーン症候群
ムーニエクーンショウコウグン
[英]Mounier-Kuhn syndrome
[同義語]巨大気管気管支 tracheobronchomegaly

喉頭から気管および気管支の嚢状拡大を呈する稀な疾患。通常30~40歳代成人で認められるが,稀に幼児例も存在する。拡張した気管支末梢は正常気管支が連続している。造影では拡張した気管および中枢気管支の軟骨輪間に嚢状突出が認められる(⇒気管憩室 ⇒ )。病理学的には気管,気管支の軟骨部,膜様部とも菲薄化した萎縮平滑筋,ならびに弾性組織で形成されており,病因としてエーラース-ダンロス症候群などと同様弾性組織の異常が考えられている。また限局型としては再発性多発軟骨炎の終末像が報告されている。強制呼気や咳嗽時には拡張部の虚脱を生ずる。有効でない咳嗽のために気道内粘液貯留を来しやすく気道感染を繰り返す。症状的には慢性気管支炎や気管支拡張症に類似する。治療は抗生物質の投与と排痰。予後はさまざまで,感染を反復すると呼吸不全,肺性心に陥る。(Pierre Mounier-Kuhn,耳鼻科,仏) Mounier-Kuhn P: Dilatation de la trachèe, constations radiographiques et bronchoscopiques. Lyon Méd 150:106-109, 1932

・慢性気管支炎、気管支拡張症だと思ったら、鑑別診断としてこの疾患を思い浮かべないといけないのでしょう。

以下日記

・最近本当に疲れやすくなって、夜ブログがかけません。2/21に記事を書いて久々です。自分の行動を思い出しています。

・2/22(火)は1日大学院。自習の時間が結構あったので4月からの疫学集中講義に備えて↓のTEXTをよんでおりました↓

Medical Epidemiology: Population Health and Effective Health Care, Fifth Edition (LANGE Basic Science)

Medical Epidemiology: Population Health and Effective Health Care, Fifth Edition (LANGE Basic Science)

  • 作者: Raymond Greenberg
  • 出版社/メーカー: McGraw-Hill Education / Medical
  • 発売日: 2015/05/08
  • メディア: ペーパーバック


・夕方のCRITICAL APPRAISALはよく知っている倉敷の病院のDr.が書いた論文でした。記述疫学的な部分はとても参考になりましたが、分析になるとちょっとどうかなーというものでした。この1年でほんの少しですが、論文を見る目が肥えたとおもいます。

・帰りは岡電バスで、大学病院から岡山駅へ。なんと100円に値下げされております。(それまで140円)手元にあった140円の回数券は払い戻しがきいていラッキーでした。

・3/23(水)は、朝の8時前から病院へいって21時過ぎまで病院におりました。チカレタビー(完全なる死語)。おはぎをある人からもらったのですが、配偶者もおはぎをいっぱいかっており、おはぎ地獄。本当の意味で『饅頭恐い』という状態でした。

・3/24(木)は、午前外来。本来二診体制の外来ですが、その日は私一人。予約数を少なくしていたので何とかクリア。午後は倉敷市役所で公害認定審査会。その後直帰。4月から行う講義の準備をひたすらしておりました。夕食がタイのあら煮。タイの骨を喉に突き立てたみたいで痛い。自分で喉をみましたが、骨は見えず。奥の方で突き立っているのではないかと恐怖しました。

・本日3/25(金)は、まど喉が痛い。午前中外来。喘息発作の人が多いです。午後は、外来看護師さん・技師さんと睡眠時無呼吸症候群の学習会。その後「早引き」して、新倉敷駅前の耳鼻科へ。喉頭ファイバーで骨は見つからず、一安心。(ただ、食道に突き立っているのではないかと小心者の私は、不安は残っておりますが)今回初めてこの耳鼻科へ行きましたが、最近新倉敷駅近くは「医療モール」という状態になっております。内科、耳鼻科、皮膚科、眼科、薬局等が集まっています。で、初めてそこに行って初めて薬局で薬をもらおうとしたのですが、間違って薬局のとなりの皮膚科に入って、受付の人に処方箋を出して、「お隣です」と言われてとっても恥ずかしかったです。多分職員さん達が、「今日、小父さんがまちがってはいってきたよ」と笑い話にしているでしょう。

・その後帰宅。まだ、明るかったのでちょっと庭の木を切って、一服。(おはぎ食べました)その後ちょっと原稿書いて、入浴。そして夕食。で、現在このブログをかいております。

・ちなみに、魚骨、とくにタイの骨は恐いですよ。↓の論文をご覧下さい。(とくに私がおそれたのは縦隔洞炎です)

①術前に診断しえた魚骨による回腸穿孔の1治験例
過去10年間の魚骨による消化管穿孔271例の分析

日本消化器外科学会雑誌
Vol. 34 (2001) No. 11 P 1640-1644

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjgs1969/34/11/34_11_1640/_pdf

【抄録】症例は57歳の男性. 下腹部痛を主訴に救急外来受診. 腹部所見は下腹部に圧痛, 反跳痛, 筋性防御を認め, 腹膜炎の所見であった. 腹部単純X線検査では圧痛の部位に一致して約3cmの線状異物陰影を認めた. 腹部CT検査では, 左下腹部の拡張した腸管内に約2cmの線状異物陰影を認め, 魚骨による消化管穿孔と診断し, 緊急手術を施行した. 今回, 1990年から99年の10年間の魚骨による消化管穿孔例271例を集計した. 271例のうち手術が229例に行われ, 術前に正診されていたのは51例(22.3%)であった. 腹部の穿孔部位は, 回腸, 横行結腸, S状結腸と, 腸間膜を持ち後腹膜に固定されていない部位に多くみられた.

②魚骨誤飲により2か所の長大な食道穿孔をきたし縦隔膿瘍, 頸部皮下膿瘍を合併した1症例

日本気管食道科学会会報
Vol. 49   (1998) No. 4  P 378-385

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jbes1950/49/4/49_4_378/_pdf

【抄録】 Esophageal perforation is a serious acute disease. In this paper, a case of esophageal perforation by a fish-bone with severe mediastinitis and a cervical abscess is reported.
For a 50-year-old male, the diagnosis was made 15 days after he had swallowed a fish-bone, because the symptoms were slight before severe chest pain began. Two esophageal perforations (19-21 cm and 24-31 cm from his initial tooth line) were confirmed by endoscopy. Moreover, mediastinitis and a huge cervical abscess were recognized perioperatively. Most of his esophagus was resected due to the two long perforations, and mediastinal drainage, cervical esophagostomy and gastrostomy were also performed. After the operation, the patient suffered from a severe pyothorax, but he fortunately recovered. 10 months later, an esophageal reconstraction by gastric tube was done. Since fish-bones sometimes cause esophageal perforations and severe complications are often seen, strict follow-up is needed for patients who accidentally swallow them.

③縦隔鏡によるドレナージで治癒した降下性壊死性縦隔炎の1例

https://www.jstage.jst.go.jp/article/ringe1998/67/7/67_7_1518/_pdf

日本臨床外科学会雑誌
Vol. 67   (2006) No. 7 P 1518-1521

【抄録】縦隔鏡下のドレナージで治癒した降下性壊死性縦隔炎の1例を報告する.症例は61歳の女性.魚骨による食道損傷で縦隔気腫として発症し,耳鼻科での食道鏡検査と処置後に降下性壊死性縦隔炎に移行した.膿瘍は胸部CTで気管分岐部までの右中縦隔を中心とする範囲であった.縦隔鏡を用いて直視下に排膿し,洗浄後ドレーンを留置した.膿よりStreptococcus viridansを検出した.術後,抗生剤入りの生理食塩水を注入洗浄しながらドレーンを徐々に引き抜き14日目に完全抜去した.その後も順調に経過し治癒した.本法は従来の頸部アプローチ法よりもドレナージ効果が確実であり,開胸法よりも侵襲が少ないため,重篤な降下性壊死性縦隔炎でない場合の外科治療として考慮すべき術式である.

④症例 魚骨誤飲により大動脈穿孔を来した食道ろう孔の1例

心臓
Vol. 16   (1984) No. 11 p. 1207-1211

https://www.jstage.jst.go.jp/article/shinzo1969/16/11/16_1207/_pdf

【抄録】異物による食道穿孔を起こし,さらにこれが心・大血管と交通し致死的大出血をきたす例はまれであり,異物誤飲の確認がないと確診は困難である.症例は60歳男子で,“魚骨を呑みこんだ感じ”とともに前胸部~心窩部に疼痛をきたし,心筋梗塞の疑いで入院した.入院時検査では白血球増多,CRP陽性を認めたが,心電図・生化学的検査などに急性梗塞を思わせる所見なく,抗生剤などの対症的治療を行いつつ種々の検査を施行した.入院後胸痛は軽減の傾向にあり経口摂取も可能であった.第10病日に前胸部~背部にわたる激痛が出現,解離性大動脈瘤を疑いCT検査を行ったが陽性所見なく,検査中数回の少量吐血をみた.第11病日大量の吐血をきたしショック状態が進展して死亡した.剖検では消化管・胸腔に大量の凝血,食道と下行大動脈問の交通,および縦隔洞間質の壊死性血腫の中心に約4cmの鋭い魚骨が認められた.異物起因の既往が確認されず,不定の胸部症状のため診断前に死亡した例であるが,早期の外科療法により救命の可能性もあるので報告する.

・どうです?十分魚骨の恐怖を味わっていただけましたか?(←多分ほとんどの人呼んでないでしょうね)

・本日はブログを長く書きすぎました。これから、4月からおこなう講義の準備をいたします。



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