血中アンモニア高値でも肝疾患が無い場合、何を考えるか？/猫のいぬまに草抜き

・血中アンモニアが高いとすぐ肝疾患と考えてしまうのですが、そんな単純思考ではダメという症例報告↓

ウレアーゼ産生菌による閉塞性尿路感染症から高アンモニア血症を呈した１例

臨床神経学 Vol. 57(2017) No. 3

https://www.jstage.jst.go.jp/article/clinicalneurol/57/3/57_cn-001002/_pdf

【抄録】症例は79歳，女性．意識障害を主訴に当院に搬送された．来院時にはJCS 20であり，四肢の筋緊張亢進を認めた．頭部MRIおよび脳脊髄液検査では異常所見を認めなかった．血液検査でアンモニア値291μg/dlと高値であったが，肝機能は正常であった．尿閉があり尿道カテーテルを留置したところ，入院後8時間で血中アンモニア値は57μg/dlまで低下し，意識レベルも改善した．尿培養よりウレアーゼ産生菌であるCorynebacterium pseudodiphtheriticumを同定した．ウレアーゼ産生菌による閉塞性尿路感染症が高アンモニア血症の原因となりうることに留意すべきである．

・高アンモニア血症についての医学書院医学大辞典第２版の説明↓

高アンモニア血症
コウアンモニアケツショウ
[英]hyperammonemia

さまざまな原因によって血中アンモニア値の上昇した状態。アンモニアはきわめて毒性の強い物質であり，中枢神経に作用し，その血中濃度に応じてさまざまな程度の臨床症状をもたらす。正常人の血中のアンモニア値は15～60μg/dLに維持されているが，血中濃度が100μg/dLを超えると不眠，興奮，性格の変化，行動異常などの症状が出現する。また嘔気，嘔吐が現れ，150μg/dL程度まで上昇すると意識障害が出現し，痙攣もみられる。このとき，典型例では羽ばたき様の手の動き（羽ばたき振戦）が観察される。また200μg/dL前後まで上昇すると意識障害はさらに進行し，400μg/dL以上では深い昏睡に陥り，呼吸抑制が現れる。先天性高アンモニア血症は，主に尿素サイクルの酵素異常によって生じる。血中アンモニアの濃度に応じた臨床症状は比較的共通しているが，疾患によってはその他の異常代謝産物による症状が加わり，多様である。⇒カルバモイルリン酸シンターゼⅠ欠損症 ⇒ （高アンモニア血症Ⅰ型），オルニチントランスカルバミラーゼ欠損症 ⇒ （高アンモニア血症Ⅱ型）

・『ジェネラリストのための内科診断リファレンス』の中で、「肝機能異常を伴わない高アンモニア血症や肝性昏睡」ということで以下のように述べられています。（閉塞性尿路感染症もちゃんと載っております）
[>]門脈・下大静脈シャントでは脱水や透析による中心静脈圧低下でシャント量が増えて肝性昏睡が急性増悪しうる．診断には超音波検査や造影CTが有望視されている．
[>]尿素サイクル酵素異常症で成人発症しうるものは成人発症Ⅱ型シトルリン血症であり，10-20万人に1人程度と稀だが20-50歳ごろより肝性昏睡を来す．炭水化物を嫌い豆類への強い偏食が特徴である．診断にはアミノ酸分析が有用である．
[>]腎不全患者でアルギニン不足のアミノ酸補充を行うと尿素サイクルが回らずに高アンモニア血症・脂肪肝を来しうるが，現在は腎不全用のアミノ酸製剤が使用されているために稀である．
[>]多発性骨髄腫でも高アンモニア血症を認めることがある〔Clin Lymphoma Myeloma. 2008 Dec; 8（6）: 363-9〕．
[>]閉塞性尿路感染症では細菌が産生した尿路内のアンモニアが血中に吸収され高アンモニア血症を来しうる〔Pediatrics. 1980 Feb; 65（2）: 294-7〕．
[>]バルプロ酸投与も肝性昏睡の原因となりうる〔Ann Emerg Med. 1993 Mar; 22（3）: 610-2〕．

・あと、本文中に尿のｐHがアルカリ性というのも診断の参考になると書かれております。アルカリ尿についての医学書院医学大辞典第２版の説明↓

通常，腎尿細管細胞，特に近位尿細管上皮細胞は，炭酸脱水酵素の働きで重炭酸を作る。重炭酸は重炭酸塩となるが，ただちに血中に流入する一方で，還元作用によって水素イオンを発生する。水素イオンは尿細管管腔に排出されるために，尿pHは低下し，酸性尿を形成する。これは健常状態においてみられる現象であるが，尿pHが上昇してくるような病態がある。これがアルカリ尿である。次のような原因で起きる。①変形菌，緑膿菌，肺炎双球菌などの尿素産生菌が産生するウレアーゼによる尿中尿素のアンモニア変換，②遠位尿細管において血液と尿細管液との間の水素イオン勾配の維持がきかないために，水素イオンの排出障害が起きる腎尿細管性アシドーシスⅠ型，③炭酸脱水酵素阻害薬の使用，④炭酸水素ナトリウムなど吸収性アルカリ性製剤使用。

・日頃あまり尿のｐHは気にしていなかったのですが、これからは気にして見ることにします

以下プチ日記

・今日は６時１分前に起床。朝勉して、少量の朝食摂って出勤。午前中外来でした。ちょっと予約患者さんが多くて、しんどいとは思いましたが、予約外の方は他のDr.が診てくれていたので、その点楽でした。外来後いったん帰宅。外来中の看護師さんとの会話で、ラーメンが食べたくなったので、帰りに「あかり」というラーメン屋に寄ろうと思ったら、なんと工事中（改修なのか、お店がなくなるのか？）。仕方なく家に帰って遅めの昼食。そして、当直に備えてちょっとお昼寝。その後とってもめんどくさい事務作業をして、ちょっとだけ庭の草を抜いて、１８時半に家を出て郵便局によって病院へ。１９時半から当直しております。今のところ病棟でちょこちょこあるくらいで大きな事無し。このまま明日の９時まで何事も無いことを祈ります。これから、事務作業して眠くなったら寝ます。

・私が庭の草抜きすると猫達がよってきて、いろいろちょっかいかけてきます。今日は餌やっておいて、その間草抜き。「鬼の居ぬ間に洗濯」ではなく「猫にいぬまに草抜き」でした。