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嫌気ボトルで鎌状赤血球症を診断/マスクを洗う

標題の「鎌状赤血球症」とは『医学書院医学大辞典第2版』によると↓


鎌状赤血球症 カマジョウセッケッキュウショウ sickle cell disease;SCD
[同義語]鎌状赤血球貧血 sickle cell anemia

典型的にはヘモグロビンSホモ接合にみられる末梢循環閉塞発作,その重積の結果としての多様な慢性臓器障害,および溶血性貧血を伴う重篤な病気である。無症状のヘモグロビンSヘテロ接合は悪性(熱帯熱)マラリアに抵抗性を示すゆえにヘモグロビンS遺伝子頻度が著しく高まり,本症の存在は熱帯アフリカでは太古より知られていた。1910年アメリカ黒人患者の血液に鎌状赤血球が見出され,この病名が生まれた。1949年ヘモグロビンSが電気泳動により分離され,病気の本体はヘモグロビンSのホモ接合であることが確定し,分子病という新しい疾病概念が提唱された。患者にとって貧血よりも血流閉塞発作のほうが何倍も苦しいので,最近は「鎌状赤血球症」の名称が一般的である。赤血球鎌状変形の機序であるヘモグロビンSの析出を予防するために,さまざまな手段が試みられつつある。常染色体劣性。

『新臨床内科学 第9版』のこの疾患の「概念」の項では↓のように説明されています。


■概念
 β鎖のN末端から6番目のグルタミン酸がバリンに変わった異常Hb(HbS)の産生による常染色体劣性遺伝性疾患である.HbSは赤血球内,特に酸素分圧の低い状態では溶解度が低下することによりゲル化tactoidし,赤血球は鎌状化sicklingする.その結果,ホモ接合homozygote(HbSS)では慢性溶血性貧血と全身の血流障害をきたす.


で、↓の様なレポートがありました


PICTURES IN CLINICAL MEDICINE
A Sickle Cell Crisis in a Blood Culture Bottle
Keisue Kmada, et al.
https://www.jstage.jst.go.jp/article/internalmedicine/59/7/59_3698-19/_article/-char/ja
・28歳男性が富士山に登って腹痛と発熱を起こしたというもの。CTで脾臓の梗塞と診断、HbA1cが2.4%と低値。ここから著者達は鎌状赤血球症を疑ったけど末梢血像は正常。で、血液を血液培養用の嫌気性菌用のボトルに入れて24時間培養して観察したところ、丸かった赤血球が見事三日月になったというもの。
・こういう診断法もさることながら、へーって、思ったのは、鎌状赤血球症って、HbA1cが低くなるのねということ。これは、この疾患以外でも異常ヘモグロビン症で起こるみたいです。例えば↓
ヘモグロビンA1c以上低値を契機に診断された異常ヘモグロビン症の2家系、4症例
医学検査 Vol.63 No.4 2014
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jamt/63/4/63_13-109/_article/-char/ja
【抄録】

異常ヘモグロビンとはグロビン鎖のアミノ酸配列異常を呈するヘモグロビンの総称である.鎌状赤血球貧血患者の研究に端を発し,Hb M-Iwateの発見により日本人においても異常ヘモグロビン症が証明された.異常ヘモグロビン症は等電点電気泳動法の応用や技術改良による検出頻度の拡大を経て,現在ではヘモグロビンA1cの測定に用いられる高速液体クロマトグラフィの異常クロマトグラムより発見される例が増えている.今回われわれは,非血縁2家系,4例の異常ヘモグロビン症を経験した.同疾患は遺伝性疾患であり人口移動の少ない地域では出現に注意する必要がある.異常クロマトグラムであってもヘモグロビンA1cが測定される場合があり,クロマトグラムのパターンに注意を要する.遺伝子解析には十分に配慮する必要があるが,不要な検査,治療を避けるためにも患者が自身の病態について理解しておくことは重要と考える.普段から臨床医とコミュニケーションを図り,適切な情報を臨床側に提供していく必要があると考えられる.

・も一つ↓

血糖コントロールの高値に対する相対的なHbA1c低値から診断に至った異常ヘモグロビンD症の1例

糖尿病59(6):401~406,2016

https://www.jstage.jst.go.jp/article/tonyobyo/59/6/59_401/_article/-char/ja/

【抄録】
HbA1cは,多くの施設で高速液体クロマトグラフィー(HPLC)法を用いた測定が使われている.HPLC法では,糖化異常ヘモグロビンは電気的変化でカラム溶出時間がHbA1cと違ってくるため,ほとんどの異常ヘモグロビン症例は血糖コントロールに比べHbA1c低値で発見される.今回,血糖値コントロール不良にもかかわらずHPLC法で測定したHbA1c値が低値と乖離を認めたアメリカ白人ハーフの1例を経験した.遺伝子解析の結果から,βグロビンのミスセンス変異のHb D-Los Angelesと診断した.異常HbD症は,以前は日本では存在しなかった稀な疾患であったが国際化により今後日本でも増えると推測される.該当糖尿病例では,HPLC法でHbA1cが偽性低値となる異常HbDの存在を念頭に置き,血糖コントロール,グリコアルブミン値なども含めて慎重に治療方針を評価する必要がある
・日常診療では、血糖とHbA1cに解離があれば、異常ヘモグロビン症を考えないということですね。(わたしゃ今までは、急性発症の糖尿病しか頭にありませんでした)
以下日記
・すこし過去を振り返ります。
・3/28(土)は、1日論文作成と合間に草抜き。
・3/29(日)は、日直、比較的おちついており机の上の片付けができました。期限が過ぎていた某資格の更新のための書類がでてきて、サーッとちびまる子ちゃんの漫画のように縦線と汗がでました。
・3/30(月)は、午前は論文作成。午後から出勤し、回診、夜間診療。当直:これはちょっとしんどかった。
・3/31(火)は、当直「明け」で午前螺以来。14時過ぎまで病院にいて帰宅。その後夕方まで論文作成。
・本日4/1(水)は5時45分起床し、朝勉後出勤。午前外来、午後回診、カンファレンス、夜間診療。19時14分帰宅。すぐ夕食:鉄板での焼きうどん・焼きそばミックス。案の定食べ過ぎて苦しい。すぐにお風呂には入れないので、論文少し書いて、調べ物して入浴。その後現在ウイスキーをちびちび飲みながらこのブログを書いております。
・日本いや世界でマスクの不足が報じられていますが、ついに当院でも数日前から一人1日1枚、それも職責者からの配給。で、多分次は1週間に何枚かで、マスクを洗って使うことになるだろうと予想し、本日初めてマスクを洗ってみました。さて、明日はどんな感じになっているでしょうね。こんなに発達した資本主義国で、マスクが不足するなんて...

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