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心臓声帯症候群=オルトナー症候群/ああ、うどんも値上げ

声がかれることを嗄声(させい)と言いますが、熱心な読者なら数年前私が突然嗄声になったことを覚えておられるでしょう。幸い特発性(原因がわからないということ)で、自然に治りましたが、嗄声の原因として悪性腫瘍がありますので、私は、もう命がみてるのではないかとおそれておりました。他の嗄声の原因として、心疾患もあげられます。↓のようなレポートがありました。


心臓粘液腫による嚥下機能低下をきたしていた一例
赤澤 純代, 他
日本プライマリ・ケア連合学会誌45 巻 (2022) 1 号
【抄録】症例は77歳,男性.2年前からめまい・嚥下機能低下があり,むせ,血痰も伴い内科で精査が行われ,原因不明の嚥下機能低下による誤嚥性肺炎の入院歴がある.今回動悸・息切れを伴い近医受診した.心臓超音波検査では,左房内腫瘍が心拍動に伴って僧帽弁に嵌頓していた.当院心臓血管外科で緊急左房粘液腫摘出術,Patch Closureが施行された.摘出術後,嚥下機能が回復したことから術後Ortner症候群と診断された.嚥下機能低下,めまいの原因精査として心臓超音波検査が重要と考えられた一例を経験したので報告する.
・Ortner症候群とは『医学書院医学大辞典第2版』によると↓
オルトナー症候群
Ortner syndrome
[同義語]心臓声帯症候群 cardiovocal syndrome
僧帽弁狭窄症でみられる反回神経麻痺。大動脈と拡張した肺動脈の間で,左喉頭神経が圧迫される。嗄声〈させい〉,左声帯麻痺などがみられる。先天性心疾患,高血圧性心疾患,冠状動脈疾患なども原因となりうる。(Norbert Ortner,1865-1935,内科,オーストリア) Ortner N: Recurrenslahmung bei Mitralstenose. Wien Klin Wochenschr 10:753-755, 1897
・↑の同義語に「心臓声帯症候群」とありますが、医中誌でこの言葉いれても、ヒットしたのは1件のみでした。また、Google scholarでも少なくとも上位には見られませんでした。なので、オルトナー症候群と使っておくのがよいのでしょうね。個人的には、日本語の病名良いなと思っておりますが...
・ところで、上の説明では、「僧帽弁狭窄症で」となっていますが、最近はもうちょっと広く「心血管疾患で」と捉えられているようです。↓のような論文もありました。
Ortner's syndrome
Hameed Aboobackar Shahul, Mohan K Manu,1 Aswini Kumar Mohapatra, Rahul Magazine
?BMJ Case Rep. 2014; 2014: bcr2013200950.
Published online 2014 Mar 11. doi: 10.1136/bcr-2013-200950
?【Abstract】A 42-year-old man with a significant smoking history presented with chronic expectorative cough and exertional shortness of breath with recent-onset hoarseness. Chest examination was essentially normal and cardiovascular examination was suggestive of aortic regurgitation. Ears, nose and throat evaluation showed left vocal cord palsy and CT scan revealed an aortic arch aneurysm. Ortner's syndrome refers to hoarseness due to recurrent laryngeal nerve palsy secondary to a cardiovascular abnormality. Aortic aneurysms usually present with chest pain, back pain or epigastric pain, depending on the site of the aneurysm. An aortic arch aneurysm presenting as hoarseness is extremely rare.
・この事例は大動脈瘤による嗄声と言うことで、上記抄録の一番最後に大動脈弓の動脈瘤で嗄声を起こすことは非常に希と書かれていますが、少なくとも私は、2000年に今の病院に勤めだしてから2例すぐに思い出します。田舎の小さな病院の医者が2例経験する病気がvery rareなんかなと思ってしまいますが、それは、言葉の定義の問題になるでしょうね。
・あと、上記本文中にIn the absence of an upper respiratory tract infection, any patient with hoarseness persisting for more than 2weeks requires evaluation.と感染がなくて2週間以上続く嗄声は精査が必要とかかれていますが、最後のLearning points
では、All cases of hoarseness persisting beyond 4weeks have to be evaluated extensively.と、4週間以上続く場合と書かれています。どっちやねん!
以下日記
・本日6/23(木)は6時26分起床。朝勉せず水島へ。午前中産業医学科外来。お昼を病院の近くの古狸庵といううどん屋さんで、ざるとろうどんを食べました。おいしいのですが、悲しいことに値上げされていました。その後倉敷市役所へ。公害健康被害認定審査会に出席して、その後玉島へもどって回診、事務作業して18時21分帰宅。ネコたちに餌やりにいって、お風呂入って夕食。ちょっとだけ勉強して19時30分から21時すぎまで、ソーシャルキャピタル研究会にZOOMで参加。お題は、「青少年の健康関連行動とソーシャル・キャピタル」でした。議論の中でライフスキルトレーニングという言葉を知りました。(いや、以前聞いたような...)参考↓
・さて、これからひとつだけ学位審査のスライドを作って、寝ます。

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