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病名に惑わされるな:熱のない家族性地中海熱/なんでもかんでも老衰と考えてはいけません

非医療者の方は驚くかも知れませんが、病名のつけ方に決まったルールはほとんどありません。発見した人、もしくはそれを有名にした人の名前をつけたり(ex. アルツハイマー病、パーキンソン病、川崎病)、発見された地名がついたり(ex. 水俣病、中東呼吸器症候群、ライム病)、その原因(のようなもの)がついたり(ex. 猫ひっかき病、狂犬病、オーム病)、いろいろです。今回の新型コロナウイルスの命名に当たってもいろいろあったようです↓


新型コロナウイルスの症状は、かくして「COVID-19」と名づけられた




・↑の記事にあるように、すくなくとも感染症に関してはWHOが2015年の命名法のガイドラインをだしています↓。その他の病名についてのガイドラインは、私は知りません。ただ、傾向として人の名前はつけない方向のようです。(ex. Wegener肉芽腫症、アスペルガー症候群・・・後者はDSM5では使われなくなっていますが、まだ一般的に使われています。私の予言として、これから使われなくなっていくでしょう)


cf. World Health Organization Best Practices for the Naming of New Human Infectious Diseases
May 2015

*アドレスが貼り付けられませんが、上で検索するとすぐヒットするでしょう。


・不適切な名前として、病態を誤解させるようなものがあります。すぐに思いつくのがアスピリン喘息。アスピリンで喘息発作が誘発されるものですが、アスピリンに限らず多くの痛み止め、またシップでも、大きな発作が起こりえます。アスピリンでなければ大丈夫と誤解してしまいますね。

・で、やっと本題。5/10に↓の様な記事を書きました。


月経周期と一致する発熱から何を考える?/禁酒継続




・上の記事は、家族性地中海熱(Familial Mediterranean Fever: FMF・・・以後この略号を使います)についてです。今回もFMFについてですが、熱のない家族性地中海熱。何じゃそりゃー?です



Familial Mediterranean Fever without Fever


Yuma Hotta, et al.


Intern Med 59: 1267-1270, 2020




Familial Mediterranean fever (FMF) is an autosomal recessive hereditary disease commonly observed around the Mediterranean basin presenting as recurrent febrile episodes. We herein describe a Japanese case of genetically-confirmed FMF, in which fever was lacking during attacks. An otherwise healthy 34-year-old man presented with frequent episodes of abdominal pain, which resolved spontaneously. During the attacks, the patient was afebrile, but the inflammatory marker levels in his blood were increased. Abdominal CT demonstrated enhancement of the jejunal membrane. After the initiation of colchicine therapy, the patient experienced no attacks for more than one year. The diagnosis of FMF was confirmed by a genetic analysis.


・UpToDateのFMFの説明の冒頭にFamilial Mediterranean fever (FMF) is a hereditary autoinflammatory disorder characterized by recurrent bouts of fever and serosal inflammation.

と書かれています。まずは、熱が特徴で気なのですね。で、熱が出てないとどうやってこの病気をうたがうんやと。(そもそもFMFがまれな病気なのに)なかなか、難儀ドス。



以下日記

・5/25(月)は、午前はZOOMでの大学院の因果推論の勉強会。多分これを貫徹したら力がつくだろうと思います。午後は出勤、病棟回診後夜間診療。帰宅は19時37分。風呂入って夕食後睡魔と闘いながらなんとか英語文献ひとつ読了。

・本日5/26(火)は、早く病院へ行って回診後患者さんの紹介状作成。その後外来。お一人様入院。昼食摂って病棟よって帰宅。16時から1時間今日ZOOMで大学院のCA:Critical Appraisal.本日のお題はCase-crossover study。分かったような分からんような、なかなk難しい。その後ちょっと勉強して、入浴、夕食。そしてこのブログを書いております。明日は、一番嫌いな水曜日かつ宿直。21時には寝床に入ります。

・ところで、本日入院された方。施設に入っている90歳以上の方。ボーとされてウトウト。脱水かも知れないと考えて200mLの点滴をすると表情がしっかりして意識も体もシャンとされました。過去何回も補液をしたらしっかりする高齢の方を経験していますが、今日ほど激変した患者さんは初めて。ついてこられていた家族の方もビックリ、喜んでおられました。もうちょっと脱水を改善するため短期間入院していただくようにしました。思うに、高齢の方で食事が食べられなくなったらそれが自然の経過(ナチュラルという言い方もしますが)ととらえる医療者もいます。私の知り合いの訪問看護師さんは、なげいていました:「ナチュラルというまえに、ちゃんと診断せーよっ!」と。そう、単に脱水だったり、治療可能な肺炎の場合もあるのです。食べなくなったら点滴なんかしない方がよいというような文章をかいているお医者様もおられますが...私の場合、それが老衰なのか脱水なのか分からない場合は、ご家族にその旨説明して点滴を試みます。それで、効果が無い場合は、後寿命でしょうねというお話をし、点滴はやめます。むやみに点滴するとむくみだけがひどくなるからという説明をして。

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