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rt-PAで口舌血管浮腫/眠い

当直をしているとこんな症状なんですが受診をして良いですかといった電話の問い合わせが入ります。そういう場合、自分が勤める病院で「ハイ、どうぞ」と返事をしてはいけない場合があります。それを受けるのは倫理的に問題、断るのが医療倫理にかなっている場合があります。それは、脳卒中、心筋梗塞が強く疑われる場合です。日頃外来で定期的に診ている患者さんでも、大きな病院へすぐ行ってくださいとお伝えします。なぜなら、治療に一刻をあらそうから。うちの病院に来てから、診断して、紹介していると時間が過ぎてしまいます。

・前置きが長くなりましたが、急性の脳梗塞の治療にrt-PAという薬を使う「静注血栓溶解療法というのがあります。そのガイドラインと言うべきものが↓



静注血栓溶解(rt-PA )療法適正治療指針 第 三 版
2019 年 3 月
日本脳卒中学会 脳卒中医療向上・社会保険委員会 静注血栓溶解療法指針改訂部会





・で、今回のお話は、その治療法のことではなくて、rt-PAの副作用のお話。↑の「指針」の29ページの副作用につて述べた部分に「特にアンジオテンシン変換酵素阻害剤が投与されている患者では、口舌血管浮腫を起こすことがあるので注意が必要である。急速に浮腫が増大して喉頭浮腫まで生じた場合、気道閉塞を起こす危険がある。アルテプラーゼ投与中であれば、直ちに投与を中止し、気道確保して、メチルプレドニンの静注、場合によってはエピネフリンの皮下注や吸入、さらに(気管支ファイバースコープガイド下)気管挿管が必要になることがある」と書かれています。で、今回は口舌血管浮腫のお話。そのことがよく分かるレポートがNEJMのimages in clinical medicineにありまし↓



Angioedema after t-PA Infusion


Miguel Leal Rato, M.D., and Mariana Carvalho Dias, M.D.





↑の患者さんは、アンギオテンシン変換酵素阻害剤(ACE inhibitor)の投与はうけていなかったと書かれています。日本語の「指針」の記述は、ACE inhibitor服用の患者さんにのみ口舌血管浮腫がおこるような誤解をあたえかねないと思います。

・日本で使われているrt-PAはアルテプラーゼというもので、商品名はアクチバシン Activacin(協和発酵キリン)、グルトパ Grtpa(田辺三菱)というものだそうです。その添付文書には、以下のような記述があります。


「舌、口唇、顔面、咽頭、喉頭等の腫脹を症状とする血管浮腫(0.03%:脳)があらわれることがある。このような場合には、気道の閉塞を起こしやすくなるので、直ちに投与を中止し、アドレナリン、副腎皮質ホルモン剤の投与、気道確保等の適切な処置を行うこと。」

「9. その他の注意    アンジオテンシン変換酵素阻害剤を投与している患者では、本剤投与中又は投与後に口舌血管浮腫があらわれる例が多いとの報告がある。」


・あと日本語の「指針」で気になったのは、対処法の薬の使い方で「メチルプレドニンの静注、場合によってはエピネフリンの皮下注」と書かれているのがきになりました。引用文献の13をちょっとみてみました↓


2018 Guidelines for the Early Management of Patients With Acute Ischemic Stroke: A Guideline for Healthcare Professionals From the American Heart Association/American Stroke Association




↑のなかにTable 9. Management of Orolingual Angioedema Associated With IV Alteplase Administration for AISとあって、投与する薬が表になっています。確かに最初にメチルプレドニゾロンがかかれています。その次には日本語の指針にかかれていない抗ヒスタミン剤、最後にエピネフリンがかかれています。ウーン、最初にステロイドをかいているのは、効果発現までに時間がかかるから最初に投与するという意味でしょうか?UpToDateのAn overview of angioedema: Clinical features, diagnosis, and managementという項をみてみると↓のように書かれていました

The treatment of angioedema depends upon the acuity, severity, and the mechanism believed responsible (mast cell or bradykinin-mediated). Mast cell-mediated angioedema responds to epinephrine (if severe), glucocorticoids, and antihistamines. In contrast, bradykinin-mediated angioedema responds to C1 inhibitor concentrate, fresh frozen plasma (FFP), and other agents that interfere with the production or action of bradykinin .



・まあ、何はともあれ、口舌血管浮腫という副作用が(特にACE阻害薬を飲んでいる患者さんに)起こりえると言うことは知っとかないと、ですね。




以下一瞬日記

・本日6/22(月)は、アイちゃんに起こされることなく5時26分起床。朝勉、朝食、午前はZOOMで大学院の勉強会。午後から出勤して回診、夜間診療でした。帰宅は19時11分。お風呂入って夕食、ちょっと勉強してこのブログをかいております。なんせ、今、とても眠い。これからもう寝ます。明日は早起きして勉強しないと。


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