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野球選手の腫れた腕/外来で反省・・・具体的には後日

手話通訳者さんへの講演や健診時、胸郭出口症候群の話を良くします。日本整形外科学会のwebsiteの説明が↓





上の説明には書かれていませんが、静脈血栓症を合併することがあるそうで、↓の様なレポートがありました。


A Baseball Player with a Swollen Arm


Futoshi Nakagami, et al.


Intern Med 59: 1675-1676, 2020





・上記本文中に出てくるパジェット-シュレッター症候群とは、『医学書院医学大辞典第2版』によると↓



パジェット-シュレッター症候群 Paget-Schroetter syndrome

腋窩部で起こる上肢の血栓性静脈炎。原因不明のもの,運動や慢性的に静脈を圧迫する骨格系の異常に起因するものがある。疼痛,発赤,圧痛をともなう腋窩部の索状の病変,側副血行の発達をみるが,静脈造影で診断される。(Sir James Paget,1814-1899,外科,英。Leopold Ritter von Schroetter-Kristelli,1837-1908,内科,喉頭科,オーストリア)


・上の論文ではスポーツ選手がリスク集団というように書かれていますが、他の職業でも上肢に負担がかかる仕事の人にもおこりますよね。下の総説をどうぞ。


Paget-Schroetter syndrome: treatment of venous thrombosis and outcomes




↑の抜粋↓


Young, otherwise healthy, males in the early 30s is the most commonly affected group. At particular risk are athletes, such as baseball players, swimmers, and weight lifters, or workers with repetitive overhead arm motion, such as mechanics or electricians


と言うことで、職業で言うと腕を上げて繰り返し作業をする機械工、電気工がハイリスクということですね。(ちなみ、スポーツ選手もプロは職業ですね・・・同語反復)


おまけで日本語の論文↓


深部静脈血栓症を伴った胸郭出口症候群 (Paget-Schroetter症候群) の1症例


日本臨床麻酔学会誌 28巻(2008) 5号




深部静脈血栓症を伴った胸郭出口症候群の麻酔管理を経験した. 患者は22歳, 男性で以前より左上肢の腫脹を認め, 精査の結果, 左鎖骨下静脈の血栓を指摘され, 胸郭出口症候群と診断された. 血栓溶解療法・血栓除去術を施行し, 抗凝固薬の内服で経過をみたが, 血栓の再発を認めたため根治を目的として第一肋骨摘出術を施行した. 周術期における静脈血栓塞栓症の2次予防に苦慮したが, 患者は合併症を認めることなく退院した. 静脈血栓症の2次予防に関しては患者個々人の病態, 病状を加味したうえで各科との綿密な連携が必要である. また, 現行の肺血栓塞栓症/深部静脈血栓症予防ガイドラインでは, 血栓症の既往のある患者の2次予防に関しては言及されておらず, 今後この点についての検討が必要と思われる.


もうひとつ3名の患者さんの報告。うち2名は何らかの作業後であり、職業性かもしれません↓


原発性鎖骨下静脈血栓症(Paget-Schroetter 症候群)
―3 例の治療経験と本邦報告例の検討―
廣岡 茂樹、他。




静脈学2013;24(1):71-77


要  約:原発性鎖骨下静脈血栓症(Paget-Schroetter 症候群)は静脈性胸郭出口症候群お
よび特発性鎖骨下静脈血栓からなり,アルゴリズムに従った治療法が普及しつつある.3
例の原発性鎖骨下静脈血栓症を保存的(血栓溶解療法,抗凝固療法)に治療し,1 例は良好
な鎖骨下静脈の開存を得ることができ,1 例は狭窄を残したものの再開通を得ることがで
きた.1 例は鎖骨下静脈に閉塞を認めたが,豊富な側副血行路の発達を認めた.3 例とも
症状は完全に消失し社会復帰を果たした.本邦論文報告86 例の中で,治療後の開存性の
記載のある42 例に関し検討し,本邦の治療の現状を概観するとともに,当院の治療方針
を構築したので報告する.


・ところで英語の論文をよんでいるとeffort thrombosisという語がでてきます。腕をしっかり動かしてできる血栓症という意味だと思いますが、日本語訳には努力血栓症、労作(性)血栓症というのがありますが、どうも定訳はないのではないでしょうか?(あったらごめんささい)。前者は何か変で、まだ後者の訳のほうが良いような気がしますが...(私が持っている医学英和大辞典(南山堂第12版)では、「努力血栓症」という訳になっております)


・何はともあれ、パジェット-シュレッター症候群というのは、業務上疾病(いわゆる労災)にもなりえるのではないかというのが、本日の私の主張です。



以下日記

・本日7/1(水)は、6時4分起床。朝勉ちょっとして出勤です。まず病棟よって午前外来、午後は回診とカンファレンス、夜間診療でした。水曜日の夜間診療の時間を短くしたおかげで本日はなんと18時前に帰宅できました。かえってちょっと調べ物、お風呂、夕食でした。で、アルコールを飲むべきかの混ざるべきか本日の夕方から悩んでいましたが、結局飲んで今しました。で、現在よっぱらてこのブログを書いています。

・実は昨日、および本日にかけて気になる患者さんがおられ、もうちょっと上手く対応しておけばよかったと反省しております。詳しいことはまた後日かきますが、何歳になっても満足できる外来がなかなかできません。ただ、昨日のシチュエーションとしては、私が宿直明けだったと言うことが、いいわけではなく、客観的にうまくいかなかった一つの要因だと臣増す。

・さて、もうよっぱらったのであとちょっとした事務作業をして早めに寝ます。明日は、午前水島で産業医学科外来。午後から玉島へ戻って仕事です。明日も早く帰ってきたい。

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