腹部コンパートメント症候群と「丸いお腹徴候」/もつ鍋で苦しい
[同義語]腹部区画症候群
[略語]ACS
さまざまな原因で腹腔内圧が上昇し,下大静脈圧排による胸腔内への静脈還流の減少,横隔膜挙上による胸腔内圧上昇等で,臓器血流障害や心拍出量が急激に減少しショックを来したりする病態。気道内圧上昇,尿量減少,呼吸不全,脳圧上昇,意識障害等の症状を呈する。腹腔内圧上昇は大量腹水,腹腔内出血,腸管浮腫等の他にダメージ・コントロール時の腹腔内ガーゼパッキングや腹部Ⅲ度熱傷による腹壁伸展不良によるもの等が原因となる。腹腔内圧は膀胱内圧を測定し代用する。一般に25cmH2Oを超えるとACSを来しやすい。治療は腹腔内貯留液のドレナージ,減圧のための開腹手術,パッキングの除去,腹壁開放や減張切開等を行う。
・私がこの病気を知った(もしくは再認識した)のは、ここ数年であり、まだ自分の頭の中に定着しておりません。なので、本日もログとシェア↓
カルタゲナー症候群/(土)(日)は勉強もし結構働きもしました
[同義語]カルタゲナー三徴 Kartagener triad
カルタゲナー(Manes Kartagener,1897-1975,内科,スイス)が記載した疾患(1933)。副鼻腔炎と気管支拡張症,および内臓逆位を三徴とする。本疾患はアフセリウス(Afzelius BA)が病態を線毛の異常によるものと明らかにし(1975),全身の線毛系器官の系統的疾患であることから原発性線毛機能不全症候群(primary ciliary dyskinesia,immotile cilia syndrome)と呼ばれることが多い。カルタゲナー症候群はその一部とされている。内臓逆位の原因は内臓の位置を決定するとされている胎性早期の胎児胚上皮の線毛運動の異常による。診断は電顕にて線毛の構造異常を証明。常染色体劣性遺伝。
誰もこなかった学習会/監査はつらいよ
発煙弾による急性肺障害/私の笑顔で癒やされた?
The toxicology of zinc chloride smoke producing bombs and screens
Abstract
Context: Zinc chloride (ZnCl2)-based smoke bombs and screens are in use since the Second World War (1939-1945). Many case descriptions on ZnCl2 smoke inhalation incidents appeared since 1945.
Objective: We provide a comprehensive overview of the clinical symptoms and underlying pathophysiology due to exposure to fumes from ZnCl2 smoke producing bombs. In addition, we give a historical overview of treatment regimens and their outcomes.
Methodology: We performed a literature search on Medline, Scopus and Google Scholar databases using combinations of the following search terms "smoke bomb", "smoke screen", "ZnCl2", "intoxication", "poisoning", "case report", "HE smoke", "hexachloroethane smoke", "smoke inhalation" and "white smoke". We retrieved additional reports based on the primary hits. We collected 30 case reports from the last seven decades encompassing 376 patients, 23 of whom died. Of all the patient descriptions, 31 were of sufficient detail for prudent analysis.
Results and conclusions: Intoxication with clinical signs mainly took place in war situations and in military and fire emergency training sessions in enclosed spaces. Symptoms follow a biphasic course mainly characterised by dyspnoea, coughing and lacrimation, related to irritation of the airways in the first six hours, followed by reappearance of early signs complemented with inflammation related signs and tachycardia from 24 h onwards. Acute respiratory stress syndrome developed in severely affected individuals. Chest radiographs did not always correspond with clinical symptoms. Common therapy comprises corticosteroids, antibiotics and supplemental oxygen or positive pressure ventilation in 64% of the cases. Of the 31 patients included, eight died, three had permanent lung damage and 15 showed complete recovery, whereas in five patients outcome was not reported. Early signs likely relate to caustic reactions in the airway lining, whereas inhaled ZnCl2 particles may trigger an inflammatory response and associated delayed fibrotic lung damage. Smoke bomb poisoning is a potentially lethal condition that can occur in large cohorts of victims simultaneously.
・なにはともあれ、訓練は安全にやってほしいものです。
以下日記
・本日3/24(水)は、5時29分起床、朝勉して早めに出勤→7時半過ぎに病院着いて早朝回診。その後午前外来、午後から回診とカンファレンス、夜間診療・・・水曜日の夜間診療は予約枠が少なくはやく終わるようにしてもらっていますが、外来診療後も19時くらいまでは働くつもりでおりました。ところがある電話がかかってきて早めに病院を出ないといけない羽目に。おかげで18時半過ぎ帰宅しました。お風呂入って夕食。録画の『マツコの知らない世界』を観ておりましたが、森山直太朗が色々歌姫を紹介しておりました。その中で白鳥英美子さんと山本潤子さんが紹介されて、おれもやーと思いましたが、全然知らない人もいっぱいおりました。
cf.「マツコの知らない世界SP」で紹介された情報
https://kakaku.com/tv/channel=6/programID=98828/episodeID=1453044/
・ところで、今朝朝一で病院に行ったら机の上にかわいい箱がおいてありました。見た感じお菓子が入っているようです。良くみたら「申し送りの際は、先生の笑顔に癒やされておりました。とうもありがとうございました」というメッセージが着いておりました。今までパートで宿直に来てくださっていたDr.(女性)が「お礼(?)」に置いてくださったものでした。(当然私だけでなく他のDr.にもそれぞれちがうメッセージをつけて)これで、私は胸がキュンとしました。(狭心発作ではない)そうか、自分は笑顔で申し送りをうけていて、癒やして差し上げていたのか。色んな意味でうれしかったです。(少なくとも怖い顔をして申し送りを聴いていなかったというのにホッと)・・・仕事においては、患者さん、職員さんに怖いオーラを出さないように努力しているつもりですが、一応そういう努力はむくわれているのかな?とちょっと「検証」できたうれしいエピソードでした。
大学で本を借りる
Here we report a unique cellular reprogramming phenomenon, called stimulus-triggered acquisition of pluripotency (STAP), which requires neither nuclear transfer nor the introduction of transcription factors. In STAP, strong external stimuli such as a transient low-pH stressor reprogrammed mammalian somatic cells, resulting in the generation of pluripotent cells. Through real-time imaging of STAP cells derived from purified lymphocytes, as well as gene rearrangement analysis, we found that committed somatic cells give rise to STAP cells by reprogramming rather than selection. STAP cells showed a substantial decrease in DNA methylation in the regulatory regions of pluripotency marker genes. Blastocyst injection showed that STAP cells efficiently contribute to chimaeric embryos and to offspring via germline transmission. We also demonstrate the derivation of robustly expandable pluripotent cell lines from STAP cells. Thus, our findings indicate that epigenetic fate determination of mammalian cells can be markedly converted in a context-dependent manner by strong environmental cues.
・最初は、こんな臨床ではない研究を読めるかなと思っていましたが、案外読めました。さすが、Natureにいったん載るだけ有って「読みやすい」=論文の体裁が整っている。残念ながらmisconductだったのですが...
・今日久々(1年ぶり?)に大学に「登校」したのは↓の本を借りるためです。(教室のセミナー室に貸しだし用に何冊もならんでします)
物事は教科書通りには行かない:肺動静脈瘻と金属アレルギー/1000歩も歩かず
[同義語]肺動静脈奇形 pulmonary arteriovenous malformation
肺動脈と肺静脈の毛細血管を介さない交通であり,通常瘤状を呈す。多くは先天性で,稀に外傷や炎症に伴う二次性のものがあり,女性に多い。右-左シャントによる症状が出現することがある。X線写真上では,下葉に好発する瘤状の陰影と同部に流入および流出する血管の索状陰影を認める。造影CTや肺動脈造影で診断しうる。常染色体優性遺伝で,皮膚粘膜の毛細血管拡張を伴う遺伝性出血性末梢血管拡張症(遺伝性出血性毛細血管拡張症,ランデュ-オスラー-ウェーバー症候群)の一症候として本症が合併することがあり,この場合は脳病変が合併したり肺病変も多発性であることが多い。症状が著明な場合は切除などの治療が必要となるが,カテーテル下に塞栓術を施行する方法もある
・肺動脈塞栓術が不可能な場合,肺動脈塞栓術を施行しても合併症が改善しない場合,大量喀血の場合などは外科的治療が行われる.
Pulmonary arteriovenous malformation with metal allergy
Takase Y, et al. BMJ Case Rep 2021;14:e240275. doi:10.1136/bcr-2020-24027
https://casereports.bmj.com/content/14/3/e240275
Abstract
We present a rare case of single pulmonary arteriovenous malformation (PAVM) with multiple metal allergies, including for platinum. A 47-year-old woman presented to our hospital without any symptoms. Enhanced computed tomography showed a single PAVM in S6 of the right lung. Interviews prompted us to suspect a history of palmoplantar pustulosis associated with metal dental filling. Dermatology patch tests for metal allergy were positive for platinum, cobalt, tin and potassium dichromate. The first choice of treatment for PAVM is endovascular treatment using a metal coil. Since the coil is composed of platinum alloy, we performed partial lung resection for PAVM without metal implants. Although metal allergy is rare for endovascular treatment, it causes an additional stress of removal of causative metal or long-term steroidal treatment. Therefore, for single PAVM with multiple metal allergies to the implants, surgical treatment without metal implants should be considered.
・上に出てくるpalmoplantar pustulosisは『医学書院医学大辞典第2版』によりますと↓
掌蹠膿疱症 ショウセキノウホウショウ palmoplantar pustulosis
手掌,足蹠(特に母指球部および土踏まず部)に対称性に無菌性膿疱の集簇を生じ,軽快と悪化を繰り返す慢性皮膚疾患で,膿疱症の中では最も頻度が高い。悪化すると掌蹠全体の落屑性紅斑局面となり,肘頭・膝蓋部の落屑性紅斑や爪変形を示すこともある。しばしば胸肋鎖骨・脊椎・仙腸関節などの関節炎を合併する。病巣感染および歯科金属アレルギーが原因となることがあるが,原因不明なものが多い。病理学的には表皮内の好中球よりなる単房性膿疱である。鑑別診断として汗疱,白癬,接触皮膚炎などがある。病巣感染が疑われる場合は扁桃摘出,齲歯治療などを行い,貼布試験で陽性を示す場合は歯科金属の関与を考える。原因不明の場合は,副腎皮質ステロイド外用剤の塗布ないしODT(密封療法),ビタミンD外用薬,PUVA療法,ジアフェニルスルホン(DDS)内服,ミノサイクリン内服,ビタミンA誘導体内服などが行われるが,慢性に経過することが多い。
・と、チラリと金属アレルギーのことが出ております。手足に発疹があるひとは、金属アレルギーのことをきいておかないといけませんね。
以下日記
・本日3/21(日)6時起床。今日はずーーーーっと家にこもって勉強とちょっとした掃除をしておりました。夕方でかけようかとも考えていましたが、雨が降るのでやめました。今日は1000歩も歩いておりません。夜は誘惑に負けてアルコールを飲んでしまいました。コロナビール1本だけなのです、もうそれでヘロヘロで何もできません。なんでこんなによわくなったんやろ?まあ、アルコール代が節約できてよろしいんですが。もうこれから寝にいきます。しばらくの間ベッドで本をよもうと思いますが、30分もしないうちにねてしまいそう。
・しかし本を読めば読むほど知らないことばかり。こんなんじゃ安心して死ぬこともできません。孔子もなかなか「道」がわからなかったので74歳までいきたのね。わたしゃ、この調子なら120歳まで生きないといけませんな。
結晶誘発急性腎不全/一生読まないであろうと思っていた論文を読む
非反回下喉頭神経/予想外に早く帰宅できた、しかし眠い
迷走神経の枝。迷走神経から分かれると,右では鎖骨下動脈,左では大動脈弓と動脈管索の下を後ろに回って上方へ反転する。気管と食道の両側に沿って上行しながら下頸心臓枝,食道枝,気管枝を出した後,下喉頭神経となり,輪状甲状筋以外の喉頭筋群と声帯ヒダより下方の喉頭粘膜に分布する。
・で、嗄声を診た場合、反回神経麻痺(『医学書院医学大辞典第2版』の説明↓)を鑑別診断に挙げないといけません。
迷走神経の分枝である反回神経は声帯の運動を支配する。核は延髄の疑核に存在し,左側は右側に比べ長く麻痺の頻度も高い。一側反回神経麻痺により嗄声〈させい〉を来し,両側麻痺では呼吸困難を起こす。反回神経麻痺の原因として,①腫瘍性疾患の圧迫,浸潤:甲状腺癌,食道癌),肺癌,縦隔腫瘍,大動脈瘤,②甲状腺手術のような頸部手術の操作によるもの,心臓手術,胸部手術,頸部外傷,気管挿管による神経損傷,頸部過伸展,③ウイルス性神経炎,多発性神経炎,重金属中毒,④原因不明の特発性麻痺がある。反回神経麻痺は,関節喉頭鏡や喉頭ファイバースコープで声帯の可動性が失われ固定していることで診断される。治療は原因疾患の治療が優先される。可逆性のものであればステロイドホルモン,ビタミンB剤の投与で回復しうる。一方,回復の可能性のないものはコラーゲンの声帯注入や甲状軟骨形成術などの処置が行われる
[同義語]声帯ヒダ麻痺 vocal fold paralysis
声帯筋の運動麻痺。概して声帯の運動神経である反回神経が麻痺することにより生じるが,必ずしも反回神経麻痺によって筋麻痺が生じるわけではないので声帯麻痺と総称される。延髄の疑核に起始核のある迷走神経から分枝した反回神経が,頸部から胸郭に入り反回して喉頭に達する長い経路の種々の部位が障害されるが,原因は感冒,甲状腺腫,大動脈瘤,縦隔腫瘍,手術による損傷,気管挿管後,延髄疾患などさまざまである。筋線維は萎縮し嗄声を生じる。特に中枢の場合,脳卒中(脳血管障害),ワレンベルク症候群などの脳血管障害があり,この場合発声障害とともに嚥下障害,構音障害などを伴うことが多い。声帯麻痺を合併する病態に,ブラウン=セカール症候群,コレ-シカール症候群,ジャクソン症候群,ヴェルネ症候群,シュミット症候群,アヴェリス症候群,ヴィラレ症候群,タピア症候群などがある。治療にファイコン(シリコーン)注入術,声帯内転術,声門開大術,レーザー手術などがある
・↑の説明の最初にあるように必ずしも反回神経麻痺によって起こるわけではないのです。その原因の一つに↑の説明にはありませんでしたが、非反回下喉頭神経の障害というものがあります。(メッチャまれだけど)↓がそのレポート。
過去3年間の甲状腺,副甲状腺手術症例190例で右151側中3側(1.9%)に,左145側中1側(0.7%)に非反回下喉頭神経(NRILN)を経験した。症例は67歳男性右下副甲状腺腺腫,70歳女性乳頭癌 cT1N0M0,65歳女性 乳頭癌cT4aN0M0,38歳男性 腺腫様甲状腺腫で,それぞれ副甲状腺腺腫摘出術,甲状腺右葉切除術,甲状腺全摘術,甲状腺左葉切除術を施行した。3例で右NRILNを,1例で左NRILNを認めた。特に左NRILNは極めて稀で,過去の文献を踏まえても本症例が6例目の報告となる。全症例において術前CTで同側の鎖骨下動脈起始異常を認めており,術前CTで動脈の走行異常を確認する重要性が再認識された。
・本文の図をみてくださいね。
以下日記
・本日3/19(金)は「寝過ごし」てしまって、6時22分。ちょっとだけ朝勉して出勤です。午前外来、午後回診、産業医面談。入院患者さん達はなんとか落ち着いておられてて6時過ぎに帰宅できました。まず、論文のチェック。それから入浴、夕食。そしてちょっと勉強してこのブログを書いております。これからもうちょっと本読んで寝たいと思います。しかし、すでにかなり眠い。22時台にはねますね。
金魚や熱帯魚もペットですよ/外来看護師さんに感謝の気持ちを形で伝える
[同義語]プール肉芽腫,魚槽肉芽腫 fish tank granuloma
マイコバクテリウム・マリヌム(Mycobacterium marinum:中等の速さで発育する光発色性菌種)がプールや水槽でヒトの主に四肢の皮膚の小さな外傷部から侵入し,2~4週間の潜伏期の後に発症する非結核性抗酸菌症の1つ。完成した皮疹は浸潤性紅斑局面であり,膿瘍や潰瘍を形成することもある。リンパ行性に進行あるいは全身皮膚に多発することもあるが,内臓臓器が侵されることはない。膿汁の塗抹標本で抗酸菌を観察できる。テトラサイクリン系抗生剤が有効である
➊皮膚非定型抗酸菌症:特にMycobacterium marinumによる感染症は魚や水槽の水から微小な外傷を介して感染し,四肢,特に手に生じる。紅斑,浸潤局面,結節,膿瘍,潰瘍を呈し,生検と皮膚の抗酸菌培養あるいは皮膚からのPCR法によって診断される。テトラサイクリン系やフルオロキノロン系抗菌薬が有効である。